こんな方におすすめ
- 企業が兼業や副業を解禁する理由を知りたい
- 先進的に兼業・副業解禁を推進する企業事例を知りたい
『兼業や副業解禁することは、企業にとってどんなメリットがあるの?』
僕自身サラリーマンとして働きながらも副業をしていますが、正直企業にとって社員が自社の業務以外の仕事をすることにどんなメリットがあるのか、しっかり腹落ちできていませんでした。
そこで、2017年5月に中小企業庁から報告された資料『兼業・副業を通じた創業新事業創出事例集』をもとに副業や兼業を推進する先進企業を7社ピックアップし、企業が兼業・副業解禁する理由を調べました。
目次
副業や兼業を推進する企業7選!

オイシックス株式会社
会社概要
- 設立:2000年/6月
- 営業収益:774,202千円(2016年単体)
- 従業員数:約700名
- 事業:インターネットなどを通じた一般消費者への特別栽培農産物、無添加加工食品など安全性に配慮した食品・食材の販売
オイシックス株式会社は兼業・副業解禁をした代表的な企業です。
特筆すべきことは、代表が率先して兼業・副業を実施していることでしょう。
会社の代表であれば、本来は会社の成長のために会社のために大半の時間を割きますが、東日本大震災後には代表地震で復興のための一般社団法人を設立するなど、社外での活動も積極的に行っているのです。
こういった社外での活動経験は、自社では身につけにくい成長機会やスキル形成に役立つと考えています。
副業・兼業を導入する狙い
各人が会社にとどまらずスキル形成に取り組むきっかけづくりとするため。代表や役員が率先して兼業を実践する!
株式会社クラウドワークス
会社概要
- 設立:2011年/11月
- 営業収益:1,212,772千円(2016/9)
- 従業員数:134名
- 事業:クラウドソーシング
兼業や副業をしたい人、そういった人たちに依頼をしたい人が集まるプラットフォームを提供していることで有名です。
多様な働き方を『いいね!』と認める社風であり、事業内容とも相まって社員自らが兼業や副業を実践している会社です。
特筆すべき点としては、副業の解禁をパッケージ化して人事にも組み込んだ『ハタカク!』という人事制度があることです。
- 副業の自由化
- リモートワーク
- フレックスタイム
詳細までは把握できませんが全社員に対して上記3つの制度を適用した相当先進的な企業といえます。
日経ビジネスの「日本を救う次世代ベンチャー100」選出、2015年には経済産業省 第1回「日本ベンチャー大賞」ワークスタイル革新賞(審査委員会特別賞)受賞、2015年度グッドデザイン・未来づくりデザイン賞 受賞など、今後の働き方改革を牽引するクラウドワークスに注目です。
副業・兼業を導入する狙い
会社のミッションである『働き方改革』を社員が先人を切って実践!
サイボウズ株式会社
会社概要
- 設立:1997年/8月
- 営業収益:613,000千円(2016年単体)
- 従業員数:371名
- 事業:グループウェアの開発、販売及び運用
グローバル企業や公共団体など様々なグループにサーバーやセキュリティなどの運用環境の提供するクラウドサービス。
「100人いれば、100通りの人事制度があって良い」という考えから副業を解禁しました。
サイボウズ株式会社の考えは、育児や副業は多様性という面ではどちらも働き方の一つであるということ。
では、どうして育児はOKで副業はNGなのか?まずは副業解禁を試行しよう!という発想です。
事業として販売しているデジタルツールを社内でも活用し、兼業導入においても情報共有が効率的に進み、有利に働いていると言います。
副業・兼業を導入する狙い
「逆に、なぜ兼業・副業を制限する必要があるのか?」という問いから試行的に解禁!
さくらインターネット株式会社
会社概要
- 設立:2000年/6月
- 営業収益:2,256,920千円(2016年単体)
- 従業員数:406名(2017年単体)
- 事業:インターネットへの接続サービスの提供、インターネットでのサーバの設置及びその管理業務、インターネットを利用した各種情報提供サービス業務等
さくらインターネット株式会社は、オイシックス(株)の例と同じく、兼業・副業を解禁することで社内では難しい経験やスキル形成をすることで、結果的に会社の価値を上げると考えています。
特に社内の働き方改革の取り組みである『さぶりこ制度』の一つに兼業・副業を位置付けるほど力を入れているのが特徴です。
さくらインターネット(株)がキーワードとするのは『社員の主体的なキャリア形成』です。
副業・兼業を導入する狙い
社外の人との交流や社内の多様な人々との協働から視野を広げ、社員の成長機会とする。クリエイティビティの追求。
株式会社ドン・キホーテ
会社概要
- 設立:2013年/8月(旧ドン・キホーテ設立は1980年/9月)
- 営業収益:532,671,000千円(2015年7月〜2016年6月)
- 従業員数:6857名
- 事業:家電用品、日用雑貨品、食品、時計・ファッション用品及びスポーツ・レジャー用品等の販売を行うビッグコンビニエンス&ディスカウントストア
株式会社ドン・キホーテには、同じ店舗内に事業所内保育施設であるドンキッズ(運営委託会社:(株)ママスクエア)があり、人手不足という課題を抱えていました。
また、従業員からはドンキホーテでの勤務以外にもドンキッズで働きたいという要望があったと言います。
ドンキホーテにとっては兼業を解禁することでドンキッズの受け入れ可能な児童数が増加し、これまで待機児童を抱えてきた主婦層の雇用につなげることができます。
従って、ドンキホーテにとって兼業・副業の解禁は同社、委託先、従業員三者にとってWin-Winの関係を築くことに成功しています。
副業・兼業を導入する狙い
店内にある保育施設『ドンキッズ』(※運営委託会社:(株)ママスクエア)でも勤務したいとの社員からの要望により実現。人手不足の解決のため。
株式会社フューチャースピリッツ
会社概要
- 設立:2000年/6月
- 営業収益:ー
- 従業員数:62名
- 事業:ITインフラ事業及びクラウドサービス事業
移り変わりの早いIT業界で生き抜くために、(株)フューチャースピリッツは画期的な制度を導入しています。
それが、業務時間内に自社の業務に関係のないことを行える『会社公認の“働かない制度”』です。
一般的な企業であれば、業務時間に自社に関係のないことをやっていたら「サボり」と言われますよね。
しかし、(株)フューチャースピリッツは会社以外の活動をすることで社員や企業の更なる飛躍を目指していると語っています。
副業・兼業を導入する狙い
異業種人材との交流による社員の知識・能力向上のため。社会経済の変化のスピードについていくための兼業・副業。
株式会社MUGENUP
会社概要
- 設立:2011年/6月
- 営業収益:80,000千円(2017年3月末時点)
- 従業員数:約180名
- 事業:イラスト、3D、映像を中心としたクリエイティブ制作。その制作に関わるツールの開発と提供。オリジナルコンテンツの企画及び制作。
クリエイターを支援するツールを提供する企業とあって、社員にも創造性が求められます。
これまでこの記事を読んできた方にとっては、『多様性』『個人の成長』を促す策として兼業や副業解禁というのは妥当な方策と考えられますよね。
さらに、兼業・副業でクリエイティブな仕事をすることで社員のモチベーションアップにもつながると言います。
副業・兼業を導入する狙い
クリエイティブに関わる副業を支援することは、『創ることで、生きる人を増やす』という企業のビジョンと親和性が高いため。社員のモチベーションアップや多様な経験による創造性や知見拡大。
『他にはどんな企業が兼業・副業解禁しているのか知りたい!』という方はこちらの記事に詳しくまとめています。
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企業が兼業・副業解禁するメリットとデメリットとは?

ここからは企業にとって兼業・副業解禁することのメリットとデメリットをまとめていきます。
企業が兼業・副業解禁するメリット
自社では経験できない成長機会やスキル向上機会に出会える
兼業・副業解禁することは、社会課題に取り組むことにつながり、自社では経験できない成長機会やスキル向上機会に出会えることがメリットです。
IT系の会社であればIT関連の業務、食品系の会社であれば食品関連の業務に取り組むことは当然です。
しかし、今の時代にはあらゆる業界の壁が取り払われつつあり、家電業界の企業が自動車を作るということも始まっています。
従って、これからのサラリーマンは自分の業界での経験を積むことはもちろんですが、「そもそも社会が抱える課題って何?」という根本を考える必要があります。ここにおいて、兼業・副業をすることが一つの解決策になるのです。
会社と社員の多様性・生産性・創造性が向上する
これまで見てきたように、会社員が務める業界以外の活動に取り組むことで多様性が広がることは間違いありません。
また、副業をすることで社員がリフレッシュできたりやりがいを感じたりすることで本業へのモチベーションも向上、生産性や創造性向上にもつながります。
ポイントはここでも『多様性』『創造性』です。
人手不足を解決できる
株式会社ドンキホーテの例で見たように、兼業・副業をすることは労働者の人手不足を解決する手段の一つです。
ただし、デメリットでも書きますが本業と副業・兼業の労働時間の管理が課題となります。
企業が兼業・副業解禁するデメリット
兼業・副業解禁に対する効果測定が難しい
兼業・副業解禁した企業事例でも見たように、先進的な企業では人事制度に兼業・副業解禁を一つの施策として導入しています。
しかしながら、兼業や副業が人事評価の対象になるかというとそれは難しいです。
あくまで、兼業や副業で得た経験やスキルを本業で活かしてこそ評価されるべきです。
ここまではいいのですが、では、どうやって兼業や副業解禁したことの効果を測定するのかという部分が一つの課題でありデメリットです。
労務管理が困難。最悪本業への影響も。
兼業や副業をすることは長時間労働につながります。
企業は自社での勤務管理しかしないとなれば、本業と兼業を合わせたら月に100時間以上残業しているなんてことにもなりかねませんよね。
このように、兼業における労働基準法上の考え方を適用しづらいことがデメリットであり、いかに適用していくのかが現在の課題です。
社員と企業間での兼業・副業解禁へのモチベーションのアンマッチ
企業が兼業・副業解禁する目的は、社員一人一人の多様性拡大やスキル向上によって結果的に自社に恩恵をもたらすものと考えているからです。
しかしながら、社員にとってその意図が伝わっておらず別のモチベーションで兼業や副業をするケースがあります。
例えばグローバル企業で英語が業務で必要な人が、英会話学校の講師として兼業することは社員にとってスキルアップにつながり、会社にとってメリットは大きいでしょう。
しかし、ただただ収入を増やしたくてウーバーイーツなどの時間労働を副業として選んでいたら双方にとってメリットは少なく、むしろその疲労から本業へ悪影響が出る可能性もあります。
おわりに
いかがでしたでしょうか?
兼業・副業解禁のメリットを見ていくと、『多様性』『創造性』をキーワードとして企業のクリエイティビティを向上させる狙いがあるようです。
インターネットの普及によって今ほど時代の移り変わりの早い時代はないでしょう。それに遅れないよう、今後ますます多くの企業が兼業・副業解禁に進んでいくでしょう。